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押し売り営業から抜け出すために、いかにしてAIを活用すべきなのか? IDEATECH × STRIX 営業DX共創プロジェクト【第1回】
「商品を売り込む営業」から、「お客様の課題解決に伴走する営業」へ。
BtoBセールスの主戦場は、いま静かに、しかし確実に移り変わろうとしている。AIによってプロダクトの模倣可能性は飛躍的に高まり、顧客側の内製化も加速する時代だ。「ぱっと見の機能」だけで選ばれる領域は、競合間で平準化していく。
そんな時代に、企業が選ばれ続ける条件は何か。
株式会社IDEATECHは、その問いに対して10年近く前から「コンテンツセールス」という独自の概念で答えを出してきた。
リサーチPRやコンテンツマーケティングを主軸に300社以上を支援してきた同社は、自社の営業組織でその思想をそのまま体現している。2021年には売上の9割を役員が担っていた組織は、2023年には平均年齢24.3歳の若手社員が売上の5割を創出する組織へと変わった。
そのIDEATECHが、コンテンツセールスをさらに加速させるために選んだのが、営業ログを起点とした半自動運転型セールスモデルを掲げるSTRIXだった。
本稿では、IDEATECH専務取締役・競仁志氏、同社セールス担当・石渡日菜氏、そしてSTRIX代表・関翔太郎、カスタマーサクセス・早川遼の4名に、プロジェクト開始の背景と導入1ヶ月目のリアルを聞いた。

「営業の主役は、商品じゃない」 コンテンツセールス®︎の原点
── まず、IDEATECHが「コンテンツセールス」という概念を打ち立てた原点を教えてください。
IDEATECH専務取締役 競仁志氏(以下、競):
「コンテンツセールス®︎」という言葉は、当社が独自につけた概念です。
元々、僕自身が営業という仕事自体がすごく好きなんです。お客様の話を聞いて、リアクションしながら一緒に提案を作っていく。あの対話の時間が、ものすごく価値があると感じてきました。
ただ、世の中で「営業」と呼ばれているものの多くは、数字のプレッシャーに押されて、押し込み型のスタイルになりがちです。
「これ、誰に対してハッピーなんだっけ?」と、ずっと違和感を持っていました。

そう考えていくと、お客様が本当に喜ぶ瞬間って、商品の機能を一通り説明したときじゃないんですよね。事例を踏まえて「自分たちの課題が解決できそうだ」と感じてもらえたとき、お客様のテンションは一気に上がる。営業の主役は商品ではなく、お客様の課題解決のはずなんです。
そういう前提に立つと、課題解決のパートナーとして役立つ"何か"の多くは、結果としてコンテンツの形を取ります。事例集、調査レポート、ナレッジ、企画書。
売れているセールスパーソンは皆、こうしたコンテンツの網の目を頭の中に持っていて、それを駆使しながらお客様と対話しています。商品説明書ではなく、企画書で提案している。
それを言葉にしたものが「コンテンツセールス®︎」です。
── 「コンテンツセールス®︎」は、もともとIDEATECHが体現していたスタイルが起点だったというわけですね。
競: はい、起点はそこです。当社は調査PRや戦略PRをずっと支援してきました。PRというのは、そもそも商品ありきで動くものではなく、お客様がやりたいことに対して何ができるかを企画し、提案するのが本質です。
だから、自分たちのプロダクトを売るというより、お客様の事業や課題に対して何を当てるかという発想がずっとありました。
たとえばYahoo!ニュースに掲載される調査PRが我々の主領域のひとつなんですが、その上半期分の掲載事例集をコンテンツとしてまとめて、メルマガで配信したことがあります。
すると「めちゃくちゃ参考になりました」「うちでも一度相談したい」と、お客様のほうから動いてくださる。コンテンツを介して、関心ある方との距離を縮めていくことができるのです。この運用は、2020年から開始し、ずっと続けています。
現在では、調査レポートやガイドブック含めて、いわゆるダウンロード資料が480個ほどあるまでに至りました。

僕らの中には「コンテンツが代わりに営業してくれる、デジタル上の営業パーソン」というイメージがあるんです。
本当はお客様一人ひとりに、全営業が1to1で提案を当てに行きたい。でも、現実にはそんなことできない。そのバランスを取る手段としてコンテンツがある、という発想です。
── ここ数年、その思想が時代と噛み合ってきている、という実感はありますか。
競: 強くあります。AI時代になって、プロダクトやソリューションの模倣可能性が一気に高まりました。さらに、お客様側でも「自分たちで作ってみよう」という内製化の動きが加速している。そうなると、「ぱっと見の分かりやすい機能」だけで戦う領域は、競合と横並びに平準化していきます。
ではそのとき、お客様はどんな基準で発注先を選ぶのか。突き詰めると「この会社なら、この人なら、自分たちの課題解決のパートナーになってくれそうだ」という期待感です。商品の機能比較ではなく、人と組織への期待感。
当社の「日本のBtoB大型購買プロセスに関する実態調査」でも、発注先を選ぶ決め手は「機能の明確さ」(40.3%)よりも「自社と似た規模の企業の事例」(44.3%)が上回りました。

加えて、「BtoB購買プロセスにおける「7つの大罪」実態調査」で明らかになった、信頼できる営業の行動の1位は「有益な情報提供」(41.3%)でした。

だからこそ、これからの時代、選ばれる営業組織と選ばれない営業組織の差は、保有するコンテンツの質に現れるのではないでしょうか。
良質なコンテンツを持っていることが、コンサルティング営業として課題解決を伴走できる証になっていくと考えています。
── IDEATECHは2021年に売上の9割を役員が担っていた状態から、2023年には5割を平均年齢24.3歳の若手社員が創出する組織へと転換していますね。これも「コンテンツセールス®︎」を体現してきた結果なのでしょうか。
競: はい、そう捉えていただいて大きく外れていません。
多くのBtoB企業が共通して抱える構造的な負のループがあります。
トップセールスに売上が集中し、その人が倒れるか辞めるかすると組織が回らなくなる。残されたメンバーは武器を渡されないまま数字だけ追わされ、退職して、また採用コストがかかる。
セールス職の有効求人倍率は2倍を超え、若手は「押し売り」「ノルマ」のイメージで離れていく。
ここを断ち切るのに、コンテンツが効くんです。トップセールスに属人化していたノウハウや知見をコンテンツの形にして、顧客が「知りたい・知りたがる」情報として再構築していきます。
たとえば「検討状況いかがですか?」というメールはお客様からすればイラッとされるだけですが、「御社の業界に関連するBtoBグローバル企業のマーケティング動向を調査しました」というメールなら、先方から「詳しく聞かせてほしい」と言っていただけそうですよね。

実際、一度失注した企業に対して、Yahoo!ニュース掲載のPR事例集をフックにフォローアップしたところ、社内のChatWorkで共有され「めちゃくちゃ刺さりました」と言っていただき、そこから受注、そして継続契約に至ったケースもあります。
コンテンツを通じて失注案件が蘇る、というのはコンテンツセールスを象徴する事例です。
そして何より、セールスパーソン自身が変わります。「嫌々お客様に連絡する」のではなく、「お客様のためになる情報を届けている」という前提で動ける。営業が楽しくなる。
すると自然とパフォーマンスが上がっていく。組織にとっても本人にとっても、いい循環が回り始めるんです。
「Pipedrive+AIで8割はできていた。でも、足りなかった」
── IDEATECHは、コンテンツセールスの実践にあたって、すでに相当高度なテクノロジー活用をされていたと伺っています。
IDEATECH セールス担当 石渡日菜氏(以下、石渡):
はい。当社ではSFA/CRMとしてPipedriveを導入しています。実はSalesforceの導入を検討したこともありましたし、kintoneを入れて失敗した経験もあります。
最終的にPipedriveに落ち着いたのは、「現場が圧倒的に使いやすい」からです。新卒1年目のシステム未経験者がゼロから構築できるほどの柔軟さがありました。
それに加えて、議事録ボットのtl;dvで商談を自動録画し、AIで独自のプロンプトを使って議事録を構造化し、それをPipedriveに連携する。さらにSlackやChatworkでナレッジを共有する。
こうした仕組みを、iPaaSのMakeを使って自動化していました。

── かなり先進的な運用ですね。それでもなお、課題が残っていたと。
石渡: はい。情報が散在してしまうことが一番の問題でした。たとえば失注した案件を掘り起こそうとしたときに、「前の議事録どこに行っちゃったっけ?」となる。
Pipedriveのなかにメモは残っていても、商談を横串で管理して、「この会社にはこういう文脈でこういうコンテンツを届けるべきだ」と判断するための定性情報の基盤にはなりきれていなかったんです。
Pipedriveは、確かに定量的な情報の基盤になります。
ただ、実際に「商談での会話」というリアルな情報を活かしきれていない、そこから戦略的な組み立てができていない、という課題感は残っていました。
競: もうひとつ大きな課題があります。当社は毎月のように新しいサービスやコンテンツをリリースしています。リサピー、レポピー、ハクピー、コラピーといった各種サービスに加えて、調査レポートや事例集も次々と生まれる。
そうすると、過去に失注した企業にも新しい切り口で再アプローチできるはずなんです。でも、「どの企業に、どのタイミングで、どのコンテンツを届けるべきか」を判断するのは、結局トップセールスの勘と経験に頼っていた。
Pipedriveの仕組みでかなりのことはできていたんですが、あくまで「議事録を要約する」止まりだった。そこから先の「次の一手を提示する」ところまでは、まだつながっていなかったんです。
「単なるツール導入ではなく、一緒に作っていくプロジェクトにしたい」
── STRIXとの出会いについて教えてください。最初の商談で、何を感じましたか。
石渡: 正直に申し上げると、初回商談でのデモを見た瞬間に「すぐに導入したい!」と思いました。これまでは、SFAや録画ツール、ChatGPTなど、複数のツールを反復横跳びしながら情報を整理する必要があり、それが現場にとって大きなストレスになっていました。
例えば、議事録だけ残っていても「これが何回目の商談だったか」という文脈がパッと分からなかったり、一つひとつの商談単体でしか評価ができなかったりという課題がありました。
しかし、STRIXでは私たちが手作業で何段階もかけてやっていたことが一画面で全部完結します。 さらに、AIの横断分析のおかげで、点在していた情報を繋ぎ合わせ、俯瞰した商談評価ができるようになる点に非常に魅力を感じました。

競: 私は2回目の商談から参加したんですが、議事録にフォーカスしているという着眼点がすごくユニークだと思いましたね。
議事録は営業活動において誰でもやることで、絶対に発生するもの。その「当たり前の行為」をどう価値転換するかっていう発想は、まさにその通りだと。
ただ、私がSTRIXに感じた一番の価値は、機能ではないんです。

── STRIXに感じていただいた価値とは、何だったのでしょうか?
競: 「一緒に作っていける」という感触です。当社は「コンテンツセールス®︎」という概念を商標登録しています。これを、本気で世の中に打ち出そうとしています。
でも、コンテンツセールスを実現するためには、営業現場の「生の声」をきちんとデータとして蓄積し、そこから「この企業にはこのコンテンツを届けるべきだ」という示唆を自動で出してくれる仕組みが必要なんです。
STRIXの関さんに、僕らがやりたいコンテンツセールスの全体像を話したとき、「めちゃくちゃいいですね」「これはイノベーションですね」と言ってもらえた。そして、それを実現するための機能を「えげつない勢いで作ります」と。
単なる受発注の関係ではなく、お互いにとって拡張性のある取り組みにしたい。そう思ったんです。
── STRIX側から見て、IDEATECHとの取り組みはどのような位置づけでしょうか。
STRIX代表 関翔太郎(以下、関): 正直に言って、競さんからコンテンツセールスの構想を聞いたとき、「これは自分たちが目指していたものの答えだ」と思いました。
STRIXはいろいろな分析結果を出せるんですけど、使い慣れてくると「だから何?」になるリスクがある。分析の先にある「具体的な行動」、特にフォローアップで何を届けるべきか?がないと、結局現場は動けない。
IDEATECHさんが持っているコンテンツの体系と、STRIXが持っている商談ログの構造化・分析能力を掛け合わせれば、「分析 → コンテンツ推薦 → フォローアップ実行」までを一気通貫で回せる世界が作れる。
これは僕たちにとっても、プロダクトの進化を加速するために必要不可欠な仕組みだと考えました。だからこそ、共創の形でプロジェクトを進めていこうとご提案させていただきました。

「まずは商談ログの"入口"を整えることから始めた」
── 導入1ヶ月目は、どこからスコープを切りましたか。
STRIX カスタマーサクセス 早川遼(以下、早川): まず大事にしたのは、「いきなり全案件を移行しない」ということです。Pipedriveで4年以上運用されてきた既存の業務フローがあるので、それを壊さない。
STRIXは営業側、つまり商談ログの蓄積・構造化・分析に特化し、Pipedriveは納品管理やCS業務に引き続き使っていただく。この役割分担を最初に明確にしました。
PoCの対象範囲は、主に「ファースト商談」から「お礼メール〜次回アクション提示」までのフローです。
石渡: 具体的には、まずGoogleカレンダーとの連携を設定して、商談に自動で入ってくれるようにしました。商談開始と共に勝手に入ってくれるのは、地味にすごくいいです。
あとは、商談ジャンルの分類(初回商談、2回目以降、ディスカッション、オンボーディングといったカテゴリ分け)を設定して、ジャンルごとに異なる分析プロンプトが走るようにしました。当社が持っている9種類のコンテンツも登録して、商談内容に応じたコンテンツサジェストが出るようにしています。
── 導入時に、現場の負荷感はありましたか。
石渡: むしろ負荷は減りました。これまでChatGPTで複数回プロンプトを回して議事録を整理していた作業が、STRIXでは1つの画面で完結する。しかもSlackに通知が飛んでくるので、商談が終わったらすぐに構造化された内容を確認できる。「いやー、それめっちゃ楽ですね」というのが正直な感想です。
早川: IDEATECHさんのオンボーディングのスピードは、他社さんと比較しても格段に速いです。もともとPipedriveやAIを使い込んでいらっしゃるので、「こういう使い方ができるはず」というイメージを石渡さん自身がお持ちだった。こちらが提示する前に、ご自身で商談を何件も録って、「ここをこうしたい」というフィードバックをいただきました。

「営業ログは"推定マシン"に変えていくべきもの」
── 導入1ヶ月を経て、見えてきた手応えはありますか。
競: 大きいのは、「営業の深いアクションはSTRIXでやって、定量データと顧客管理はPipedriveで」という切り分けが明確になったことです。
Pipedriveの営業活用は、アクション管理に留まってしまっており、深みある1to1に近い行動を起こせていなかったのです。
ただ、Pipedriveはアクションやアクティビティ管理を大事にする思想のプロダクトだから、それでよかった。でも、もう一歩先にいきたい。
STRIXが入ることで、ようやく「手触りがあってリアルな営業活動を組織で管理し、実行する」ための基盤が整い始めた感覚があります。
あと、これは個人的に面白いと感じたことなんですが、商談のスコアリングやフォーキャストが、実際の音源データから出てくるところですね。数字が根拠のない勘ではなく、商談のなかで交わされた実際のやりとりに基づいているのは、信頼感が全然違います。
石渡: 私はまだ「もっといい使い方があるはず」という感覚です。
文字起こしの精度が高いことはわかった。設定の自由度が高いこともわかった。でも、それを日々のルーティンにどう組み込んで、チーム全体で活用するフローを作るかは、これからの課題だと思っています。
── 3〜4ヶ月目に向けて、どのようなことを検証していきたいですか。
競: 僕が描いている世界観は、究極的には「会話したらデジタル上の仕事が終わる」というものです。商談をしたら、議事録がまとまり、お礼メールの下書きが生成され、次に届けるべきコンテンツが推薦され、フォローアップのスケジュールが自動で組まれる。人間は最終的な判断と、お客様との対話に集中できる。
STRIXのなかにIDEATECHが作ってきたコンテンツを格納して、商談ログの分析結果と掛け合わせて、「この企業にはこのコンテンツを届けましょう」というサジェストが自動で出る。これができたら、コンテンツセールスは一気にスケールすると思っています。
関: 僕たちも、まさにその機能を全力で開発しています。コンテンツの検索・推薦機能は、1〜1ヶ月半で実装するつもりです。
IDEATECHさんとの取り組みで得られる知見は、STRIXのプロダクトそのものの進化に直結する。だからこそ、この共創プロジェクトを絶対に成功させたい。
競: ROI1000%を目指しましょう、と関さんには伝えました(笑)。
でも本気ですよ。コンテンツセールスという概念を業界標準にするために、僕たちはSTRIXのブランドでこの取り組みを打ち出してもいいと思っているくらいです。

【結び】
今回の取材で印象に残ったのは、IDEATECH・競氏のある一言です。「単純な受発注の関係ではなく、お互いにとって拡張性のある取り組みにしたい。」
IDEATECHが長年かけて体現し続けてきた「コンテンツセールス®︎」という思想と、STRIXが構築してきた「営業ログ基盤」が、互いを必要としながらひとつの大きな仕組みへと統合されようとしています。
それは「押し売りのない営業」の実現に向けた、現在進行形の実証実験です。
本連載は全3回を予定しています。第1回(本稿)ではプロジェクト開始の背景と1ヶ月時点の手応えを、第2回では3〜4ヶ月目の具体的な成果と、検証のなかで「当たった仮説/外れた仮説」を、第3回ではプロジェクトの総括と、IDEATECH・STRIXが描く2年目以降の展開を描く予定です。
コンテンツセールスがどこまでスケールするのか。営業ログを起点とした半自動運転型セールスモデルが、業界の常識をどう書き換えるのか。次回以降、その答えを少しずつ明らかにしていきます。

